設計者はどう決めたの?
全国から新しい図書館の設計について多くの提案をいただきました。
多様な視点から審査を行い、最も優れた提案をした設計者が選ばれました。
設計プロポーザルについて
2025年7月から11月にかけて、新花巻図書館整備基本構想および新花巻図書館整備基本計画をもとに基本設計と実施設計を行うため、設計条件や配置計画、平面および空間の構成、寸法および面積、機能や性能、主な使用材料や設備機器、建物の内外のデザインなどを検討し、設計書を作成する業者の選定を公募プロポーザル方式で行いました。
※公募プロポーザル方式とは、その事業の推進に最も適切な想像力や技術力、経験、実績などを持つ「提案者」を広く募集し、選定する方式です。優れた「設計案」を選定する「コンペ方式」とは異なり、提案内容が必ずしも設計案となるものではありません。
全国から広く設計提案を募集し、61者から応募がありました。その中から、第一次審査(書類審査)と第二次審査(公開プレゼンテーション)によって最優秀者と次点者を選定しました。
審査の経過や第二次審査に参加された各提案者に対する個別の講評等の詳細については、次のPDFファイルをご確認ください。
プロポーザルを終えて(選定委員会による全体講評)
第二次審査に提出された6者の提案は、どれも深い経験に裏打ちされた精査を重ねた練度の高い提案であり、その中からひとつだけを選ぶ作業は非常に難しいものでしたが、選定委員間でそれぞれの価値観、評価軸の多様性を尊重しながら真摯な議論を重ね、この結論に至りました。
図書館というプログラムに対し、本と人との普遍的な親密性と、将来的に大きく変わっていくであろう社会的要請の変化のバランスの中において、本プロポーザルにおいては、駅前という利便性の高い場所が図書館敷地として選ばれた意味をくみ取り、使い勝手の良さとしての空間の具現化と、市街地再生の起点として長く市民に親しまれ、利用価値を最大化できる図書館を、厳しいコスト管理の下で短い期間の中で練り上げなくてはならないという課題があります。こうした難しい課題に対し、多大な労力を費やし、真摯に取り組んでいただいた皆様に、深く感謝を申し上げます。
審査結果
選定委員による最終審査の結果、最優秀者(優先交渉権者)と次点者が次のとおり決定しました。
最優秀者(優先交渉権者)
昭和設計・tデ・山田紗子建築設計事務所共同企業体
資料:提案書_昭和設計・tデ・山田紗子建築設計事務所共同企業体(C者)
※提案時のイメージ図です。実際の図書館は、今後実施される基本設計および実施設計に基づき建設されます
選定委員会による講評
各ジャンルの図書が連坦しながら、豊かな空間が生み出されている柔軟な構成をもつとともに、時間外利用ゾーンの空間的魅力や、広場に小さな空間を張り出させてその魅力化を図るなどユニークさを併せ持つ提案であることが評価されました。
また、可変性のある閉架ゾーンを中心に、多様な空間を配置する構成は明確であると評価されました。計画全体に、身体知をきっかけにした余地を意図的に設けるアプローチは、賢治の精神とも呼応するとの意見もでました。
「市民ライブラリアン」の提案は可能性を備えている一方で、その実現のためには、今後の体制作りが不可欠であり、行政や関係者を含めてさらなる議論が必要であると評価されました。
また、複数の事務所、学識者が関わるチーム構成は魅力的で、プレゼンテーションにおいても、若い設計者の視点と経験豊かな学識者の融合が、期待を持って受け止められましたが、実施段階でそれを担保できるかは不透明な部分も多いとの意見も出ました。
しかしながら、最終的には、そのあたりの課題を乗り越えることが出来る強さを備えていると判断され、最優秀者として選定されることになりました。
第二次審査の概要
| ● 日時 | 2025年11月24日(月・振休) |
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| ● 審査方法 | 第二次審査は、第一次審査を通過した6者を対象に、花巻市文化会館で実施しました。審査のうち、提案のプレゼンテーションと選定委員によるヒアリングを公開で行い、市民をはじめとする延べ188人が傍聴しました。 プレゼンテーションとヒアリング終了後、選定委員による審査を非公開で行いました。 |
プレゼンテーションおよびヒアリングの様子(当日発表順)
※発表順は審査当日に抽選で決定しました
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- 【A者】C+A・木村設計A・T共同企業体
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- 【B者】キッタン・スタジオ・ウエスト設計共同企業体
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- 【C者】昭和設計・tデ・山田紗子建築設計事務所共同企業体
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- 【D者】有限会社マル・アーキテクチャ
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- 【E者】FULL POWER STUDIO株式会社
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- 【F者】西澤・畝森設計共同企業体
第一次審査の概要
| ● 日時 | 2025年9月26日(金)15:00~18:30 |
|---|---|
| ● 審査方法 | 第一次審査では、定量的評価と定性的評価の両面から審査し、第二次審査に進む参加者を5社程度選定することにしていました。 定量的評価:提案者の能力、技術者の資格・経験、同種業務実績 など 定性的評価:計画に関する考え方、提案内容の独創性や実現力、地域特性への理解 など |
| ● 審査結果 | 優れた提案が多くあり、選定委員による審査の結果、6者が第二次審査の対象となりました。 |
選定委員会について
選定委員会の構成
| 区分 | 分野 | 氏名 | 所属・役職 |
| 委員長 | 建築計画 | 乾久美子 | 横浜国立大学大学院/建築 都市スクールY-GSA 教授 |
| 副委員長 | 図書館理念・実装 | 吉成信夫 | 元・みんなの森ぎふメディアコスモス総合プロデューサー 東海国立大学機構参与、明石市本のまち推進アドバイザー他 |
| 委員 | 建築計画・都市計画 | 小野田泰明 | 東北大学大学院工学研究科 教授 |
| 建築設計環境建築 | 竹内昌義 | 東北芸術工科大学デザイン工学部建築・環境デザイン学科教授 | |
| 図書館学 | 早川光彦 | 富士大学経済学部経済学科 教授 | |
| 行政 | 松田英基 | 花巻市副市長 |
選定委員長・副委員長からのメッセージ
委員長からのメッセージ
新花巻図書館整備基本計画にあるように、花巻市ではこれまで長い時間をかけて新図書館の構想を練り、敷地の選定を議論してきました。その間、新しい図書館に対する期待が高まり続けています。本プロポーザルは、そうした機運の高まりを一手に引き受け、市民の誰もが納得をする新しい図書館のあり方を視覚化する機会になります。
駅前という利便性の高い敷地が選ばれた意味を受けとり、使い勝手の良さとして具現化し、都市の魅力に繋げることが大きな課題になるでしょう。
図書館というプログラムは昨今、様々な試みにより、その可能性が探られてきています。新花巻図書館もまた、そうした可能性をよりいっそう深く探るものとして提案いただくことを期待します。
もちろん、市民に開かれ、先進的な文化が花開いた花巻市の歴史につながる魅力的な施設になることは必須です。環境や公共サービスに求められる価値観が今後大きく変わっていくことが予想される中で長く使われ、花巻市の未来を担う中核施設のあり方を、建築家の卓越した空間構成力と都市デザイン力によって提案いただくことを期待しています。
選定委員会委員長 乾久美子
副委員長からのメッセージ
花巻は、宮沢賢治が生涯を過ごしたまちとして全国に知られています。彼の残した共生的な世界観や自然観は、今なお国内外で輝きを増し続けています。
花巻の文化的風土が育んできた先人たちの学びの精神を受け継ぎ、賢治という傑出した知性を輩出したこのまちに、新たな図書館が生まれます。
そのためのプロポーザルである以上、新花巻図書館整備は、本の貸し借りだけにとどまらず(もちろんそれは大事な核となるサービスですが)、本を通してひとやもの・ことがつながる、市民の出会いと交流の場としての豊かな可能性もまた重要な要素として期待されることと思います。駅前立地という特性からすれば、花巻市内に広く点在する、各地の博物館や資料館、宮沢賢治記念館や宮沢賢治イーハトーブ館、萬鉄五郎記念美術館などとともに文化的なコモンズ(誰もが自由に参加できる文化的空間)をゆるやかにつなぎあう情報面での入り口ともなるはずです。
プロポーザルを提出される皆さんには、これまで図書館が長い間培って来た子どもの読書推進、文字・活字文化をこれからの時代に合わせていきいきと多様にひらいていく新たな図書館像、言い換えれば、新たな時代の羅須地人協会を期待します。
選定委員会副委員長 吉成信夫

