みんなではなそう みらいの図書館
さまざまな市民の意見を取り入れるために開いたワークショップです。
みんなが使いたくなる図書館に近づく、貴重な声をたくさん聞くことができました。
第1回 「みんなでとしょかんに行ってみよう!」
● 日時 | 2020年8月23日(日) 9:00~13:00 |
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● 場所 | 花巻図書館、東和図書館 |
● テーマ | みんなでとしょかんに行ってみよう! |
● 参加者 | 21 名 |
● アドバイザー | 富士大学教授 早川 光彦 氏 |
図書館ワークショップについて
はじめに、生涯学習課から図書館整備の必要性やワークショップ開催の趣旨を説明しました。花巻図書館は昭和 48 年に建設され、今年で47年が経過し老朽化が進んでいます。また、閲覧スペースが2階にありますが、エレベーターがなくバリアフリーに対応していないことや、書庫などのスペースも不足しているなどの課題が多くあります。今年度は基本計画の策定に向けて進んでいきますが、改めて市民の皆さんのご意見を聞くべきと考え、ワークショップの開催に至りました。7 月~8月には20代・高校生を対象に新しい図書館について話し合いをしてもらいました。今回は一般編というとこで、世代を限定せず多様な皆さまにお集まりいただき、新しい図書館についてご意見やアイディアをいただきながら、新しい図書館の具体化を図ります。
図書館見学
まずは図書館の現状を見て知ってもらうため、花巻図書館と東和図書館を見学しました。
【 花巻図書館について 】
●1 階会議室
・映画会やおはなし会などを月に 3~4 回開催。
●入口~1 階全般
・感染症対策のため、入口に体温測定器を設置。
・学習室と新聞室は感染症対策のため座席を減らし、現在は有事に連絡が取れるよう、名前と電話番号を記入していただいている。
・バリアフリーコーナーとして受付を設置。エレベーターがないため、インターホンを設置し、職員を呼び出せるようになっている。
●階段昇降機
・階段の上り下りが困難な方のために昇降機を設置。安全性には問題がないものの、初めて利用する方は恐いと感じる方もいる。
●資料室(視聴覚ライブラリー資料保管室)
・視聴覚ライブラリーは団体向けに全部で 1,175 本の DVD やビデオなどの資料を貸し出している。
・官報など行政資料も置いている。
●郷土資料室
・宮沢賢治や高村光太郎などに関する資料や歴史書や郷土史など約 12,500 冊保存。
・1 冊しかない資料は館内での閲覧とし、2 冊以上ある資料は貸出可能としている。
・賢治記念館等に観光でいらっしゃった方が立ち寄って利用することも多々ある。
●新聞資料室
・新聞 12 紙を保管している。
・新聞閲覧室は換気が悪いため、現在は 2 階の閲覧コーナーで閲覧してもらっている。
・スペースが狭いため、今後新聞の保管方法について検討する必要がある。
●こども室
・絵本を中心に、18,000 冊が並ぶ。
・カーペットのスペースがあるので、常時だと親子で座って読み聞かせをしている様子が見られる。
・感染症対策で利用者が自由に使える除菌ボックスを新たに設置。
(普段から返却された本は除菌剤を使用して拭いてから棚に戻しているが、気になる方は除菌ボックスを使用できる。)
●図書閲覧スペース
・配架は日本十進分類法に則って分類している。
・書棚が足りなくなっている部分は簡易的な書架で補っている。
●閉架書庫
・約 50,000 冊を保管。
・学校やボランティア団体に貸す本もここに保管している。
・書庫 1 階はカウンターに声をかけて中に入ることができる。
【 東和図書館について 】
●全体について
・平成 17 年 12 月に開館し、平成 18年1月に合併したため、1か月間だけ旧東和町の図書館として開館。
・東和町の目指す図書館像として「開かれた滞在型図書館」「町の情報拠点」「町の顔をもった図書館」をイメージして建てられた。
・喫茶を含んだ複合施設。全体で 1,389 ㎡。
・書架も木製で、全体的に木の温もりを感じられる落ち着いた雰囲気になっている。
・天井が高く、書架と書架の間も人が両側に立っても車いすが通れる広さを取っており、書架の高さも低いので広さを感じられるつくり。
・配架は日本十進分類法を基本とし、子どもの様子を見ながら料理の本を選んだりしやすいよう、料理の本や子育ての本を児童コーナー側に配置している。
●児童コーナー
・全体の約 3 分の 1 を児童コーナーに充てており、子育て世代から好評。
●ヤングアダルトコーナー
・その世代それぞれの興味や能力に合わせて資料を選べるよう、児童と一般の間に設置。
●新着・企画コーナー
・文化施設連携として東和にある萬鉄五郎記念美術館の企画展等に合わせ、関連資料の展示貸し出しを行っている。
・閉架書庫は開放できないつくりになっているため、閉架書庫にある資料を表に出して紹介し展示貸し出しをしている。
●管理棟(元情報センター側)
・ギャラリースペース
展示スペースとして、一般の方に月単位で貸出を行っている。
・談話室
コロナ対策で利用不可としているが、夏休み期間限定で学生の学習室としている。普段は飲食可能で誰でも利用できる。
・視聴覚室兼会議室
約 100 人収容可能で大型のスクリーンを備え映画会や会合などで利用しているが、現在はコロナ対策で図書館事業のみの利用としている。
・喫茶
一般の方に喫茶店として貸し出して運営いただいている。
基調講演
図書館見学後、アドバイザーの早川氏より「図書館ってどんな場所?」というテーマで話題提供をいただきました。早川氏は川崎村立図書館(現一関市川崎図書館)にて主任司書として設立に関わり、2004 年からは南相馬市立中央図書館の新設に尽力されたのち副館長として活躍されました。2014 年からは富士大学経済学部の教授として教鞭をとりながら、東北地域の公共図書館の新設にも携わっています。
早川氏には、図書館法や国内外の図書館の事例を紹介いただき、公共図書館がどのような役割を担っているのか、本の貸し出しにとどまらない様々な機能を学びました。本のある広場として、刺激的で楽しい場所として、一人ひとりが持つ可能性を引き出す場所として…今、図書館がどう使われているのか話題提供をしていただいたことで、これから新しい図書館を考えるためのヒントを共有することができました。
参加者のアンケートから
●図書館見学について
・花巻図書館のバリアフリー化はやはり必須だと感じました。
・花巻、東和、各図書館の違いが良く分かった。設立のコンセプトが違うことから、単純に比べることはできないが、2館の様子から具体的に図書館の姿を想像することができた。
・花巻の図書館、2F の蔵書コーナーに「岩手の温泉 おすすめの宿 平成17年版」があった。これでは図書館が面白くない。古いのは建物だけにしてほしい。
●基調講演について
・図書館の既存のイメージと、これから利用したい図書館のイメージをつなぐ貴重なお話でした。花巻市民としてほしい図書館、利用しやすさのイメージが広がりました。
・ワクワクするような図書館の紹介があり、今後のワークショップが楽しみです。
・早川先生の講義は、これから「こんな図書館がほしい」と大きな声で言ってもいいんだと勇気づけられました。
講演メモ
【 はじめに 】
・図書館をつくることは、花巻でも 50 年に一度あるかないかの一大プロジェクト。「経験したこと
がない」「わからない」は当たり前。今日お集まりの皆さん、図書館に関心のある方、そして市役所が一緒に学び合って理想の図書館を目指していくことが重要。
・これまでの日本の図書館のイメージは、暗い、役所くさい、センスが悪い、使いづらい、生活に必要でない、一部の本好きが行く場所…などなど。1990 年代以降から新しい印象の図書館ができ始めた。
・図書館が成り立つ要素=人(スタッフ)、資料、建物+利用者。図書館は誰でも使える場所。
・印象的な職員の言葉(旧川崎村立図書館)
「情報の過疎地からの脱却がありえなければ人口の過疎からの脱却はありえない」
「人と人が集まるところに知識と情報が集まって、知識と情報が集まるところに、人が集まる」
【 図書館法から考える目指すべき姿 】
・図書館法第二条「一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資することを目的とする施設で(以下略)」→図書館は自分の「楽しい」「おもしろい」という感覚を掘り下げていくと、自然な形で知的な場所に連れて行ってくれる場所。
・図書館法第三条「図書館は、図書館奉仕のため、土地の事情及び一般公衆の希望にそい、更に学校教育を援助し得るように留意し(以下略)」→花巻の土地の事情(例えば年齢構成や産業構造など)を考慮して、花巻の人が読みたい本、必要な情報がそろった図書館をつくる。
・図書館法第十条「公立図書館の設置に関する事項は、当該図書館を設置する地方公共団体の条例で定めなければならない」→図書館は自治に立脚している。
【 図書館ってどんな場所?―写真で見る公共図書館の姿― 】
●南相馬市立図書
・図書館は「本のある広場」とも言われる。
・図書館を考える際は、可能性を限定しないで考えることが重要。
・としょかんの TOMO みなみそうま(図書館について学びあい、協力的活動を行う団体)は 200 人以上の会員で組織されている。要望を市へ伝えたり、図書館にお花を活けてくれたり様々な活動を行っている。
・南相馬は紙の資料とデジタル資料のハイブリットを目指している。
・本だけでなく、ぬいぐるみや絵も貸出。
・本を読む以外にも将棋をしたり、ゲームをしたり、おしゃべりをしたり、勉強をしたりと様々な使い方をされている。
・ティーンズコーナーには一言カードの掲示板があり、カードに書かれた質問に対して、必ず支所が答えるという仕組みで、若者と司書のコミュニケーションツールとなっている。
・カフェは福祉団体に運営を呼びかけ、ハンディをもつ人が働いている。
・旅と地図のコーナーでは、全国の観光パンフレットと海外 20 ヵ国の観光パンフレットがそろっている。
●一関市立川崎図書館(旧川崎村立図書館)
・一関は本の貸出冊数に制限がない。
・子どものサービスにとても力を入れている。
・東和図書館と同じくらいの広さ。
●紫波町図書館
・スタッフが鍛えられているので、子どもへの対応も徹底している。
・評価され、期待されている図書館には必ず理由がある。逆に住民に相手にされていない図書館にも理由がある。
・たくさんの人に使われる図書館は、様々な年代の方が万遍なく訪れる。0 歳児から高齢の方まで。その方達がそれぞれの目的を達成できるか、自分のお気に入りの場所を見つけられるかが大事。
●一関市立花泉図書館
・地元のお酒について展示がされており、本と一緒に酒瓶も飾るなど工夫されている。この図書館、何かあるな、おもしろそうと思わせることが大事。
・図書館は成長する有機体。住民の要求と社会的要求両方をとらえているか。社会の変化に敏感に反応しているか。
・利用者が楽しいと職員も楽しい。
●白河市立図書館
・近くに行くことがあれば、必見の図書館。司書の教育がしっかりとされておりプロフェッショナルな仕事がみられる。
・新刊の棚も様々な情報を基に選び抜かれている。
・大学図書館並みの資料ぞろえ。
・特にコミックには力を入れている。
●大崎市立図書館
・2 階は全てティーンズコーナー。
・中高生と一緒につくっている本棚がある。
・図書館は日常。
・図書館が家族同士の絆も強める。